前回、前々回とで、自己治癒力とそれに関わりの深い間質液(詳しくは下の記事をお読みください)について書きました。
その中で、全身の静脈とリンパ液が老廃物を運ぶ、と書いたのですが実は例外があり、脳と脊髄には静脈はあるけど、リンパ管はないのです。(なので、解剖学の知識がある方は前々回の記事については違和感を覚えたと思います)
それがどうしたと言われそうですが、リンパ管がないということは、細胞から静脈(毛細血管)に乗せられないタンパク質などの大きな老廃物を運ぶ経路がないということになります。
しかし、生物は絶えず代謝(栄養を吸収し老廃物を排出するプロセス)を繰り返しているので、エネルギーを作りだしたら、必ず同時に老廃物も作られるので、それをどうにかしなければ、細胞はたちまち老廃物だらけになってしまいます。
そこで重要になってくるのが、脳脊髄液という脳と脊髄に満ちている液体の存在で、それによって老廃物が回収されるのですが、その循環は自己治癒力と深く関係しているため、それを避けてオステオパシーの治療は語れません。
ということで、前置きが長くなりましたが、今回は、その脳脊髄液について、オステオパシーについてどんな意味があってどう理解しているのかを、できるだけ分かりやすく書いてみようと思います。
・脳脊髄液って何?
脳脊髄液とは、その名の通り、脳と脊髄を浸している組織液で、前回書いた間質液の脳バージョンだと思っていただければ大体合っています。
ただ、間質液が血液の水分からダイレクトに作られるのに対して、脳脊髄液は脳の中にある脳室というスペースの脈絡叢(みゃくらくそう)というところを通して作られます。
通常の間質液と違い作るのにひと手間かけるのは、脳の血管は有害な物質を通さないフィルターのような構造になっており、そこを通すことで有害物質をろ過してから、脳を浸している大切な液体を作ろうということなのです。
そして、そんな手間をかけて作られた液体の中に脳と脊髄は浸され、まるでパックに入ったお豆腐のように浮かんでいます。
もし、パックの中の水分がなければお豆腐は乾いてしまいますし、衝撃を受ければ容易に壊れてしまうでしょう。
ということは、脳脊髄液とは、脳の栄養と保護をしつつ、上に書いたように脳にはないリンパ管の代わりに老廃物の排出を受け持っている液体、ということになります。
また、脳と脊髄の中だけにとどまらず、神経線維の周囲の膜に沿って末端まで行き、漏れ出た後、そこからリンパ管を通って再び吸収されます。
つまり、神経そのものを潤す(栄養する)液体でもあるのです。
そういう液体が身体の隅々まで十分に行き渡らなければどうなるでしょうか?
・枯渇した場(withering field)
オステオパシーを提唱したスティル博士は、体内の異常が起きている場所を、枯渇した場(withering field)と呼びました。
これはもともと農業的な言葉でそうで、潤いがなくなってカラカラに乾いてしまった農地というニュアンスのようで、つまりスティル博士は、組織にきちんと脳せき髄液が注がれず乾いてしまったように感じるところを『枯渇した場』と呼んだのです。
細胞を癒し、維持するためには栄養豊富な新鮮な血液が不可欠で、血液が来れば間質液もリンパ液も作られるのですが、神経を直接癒している脳脊髄液は血液とは別なルートをたどり、しかも血液に比べてとてもゆっくり動く液体(血液は1分間に60回程度、脳脊髄液は1分間に8回程度の振幅)なので、血液とは別にフォーカスをして取り扱う必要があります。
しかし、逆に言えば脳脊髄液が通ることができる状態ならば血液も通ることが可能(血液より勢いがない脳脊髄液が通れるということは、体液はスムーズに流れているということ)なわけです。
・頭蓋領域を含めた全身的な治療
そこで、体液の流れを阻害する要素を取り除いていくことが細胞レベルの癒しにとって必要不可欠なことになってくるのですが、オステオパシーにおける一般的な治療の仕方としては以前にも書いた通り、まず『筋膜を調べ、筋膜から治療』します。
そして、その治療は脳脊髄液の出元である頭蓋の領域にも及びます。
もちろん筋膜(膜組織)は頭蓋領域にも存在しますので、そこにアプローチするすることもあるのですが、どちらかというと頭蓋領域においては頭蓋骨や脳脊髄液、中枢神経の『動き』を看取して、それらに対してアプローチしていく方法を取ります。(ちなみに頭蓋骨は最大で40ミクロン程度動いていることが証明されていますが、脳脊髄液や中枢神経系の動きを体の外から看取する方法については科学的に証明されていません)
それらの治療テクニックは、オステオパシーのもう一人の偉人である、W.G.サザーランド博士(1873-1954)によって確立されていきます。
ということで、今回は細胞レベルでの癒しに不可欠な脳脊髄液について少し触れてみました。
少し長くなってしまったので、具体的なアプローチの仕方と効果については次回に書いていきたいと思います。
今回もお読みいただきありがとうございました。
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いわさき整骨院 いわさきオステオパシー施術院
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